2015年1月27日火曜日

「笑う神様」

昨年の1月から6月まで、南日本新聞の「南点」というコーナーで
コラムを書かせていただきました。

一応、「おもちゃコンサルタント」という肩書だったのですが、
あんまりおもちゃの話はなく…
ただの子育て日記では? と思ったりもしながら
つらつらと、書いておりました。

どんなこと書いてたの? と聞かれることが
ごく稀に(笑)あるので、こちらにも掲載しちゃおうかなと。
一年遅れの原稿ですが、もし興味のある方は読んでくださいね。


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「笑う神様」(南日本新聞「南点」 平成26年1月17日掲載)

  毎年一月十日に、近所の神社で十日えびす祭が行われる。普段は人影の少ない神社だが、この日ばかりは県内各地から商売繁盛の御利益を授かるために大勢の参拝客が訪れるという。私も商売人の端くれとして、「商売繁盛で笹もってこい」という賑やかな掛け声に誘われて参拝するのがここ数年恒例となった。境内で売られている福笹や福熊手にあしらわれたえびす様のふくよかな笑顔は見ているだけでもなんとはなしに縁起良く、まさに福を呼び込むシンボルに相応しい。参拝の記念にいただく御札にも「笑門来福」の文字がある。

 笑門来福といえば、笑顔のパワーを初めて実感した瞬間があった。生まれて間もない娘を抱いていたときだ。スヤスヤと寝ていた娘の口元にふっとほほえみが浮かんで消えた。そのとき、私の中に今まで感じたことのない穏やかな感情が広がっていったのだ。ほんの一瞬、赤ん坊の顔の筋肉がわずかに動いただけだというのに。この、生後間もない赤ちゃんの笑顔は自発的微笑(生理的微笑)と呼ばれている。外からの働きかけに由来するのではなく、赤ちゃんの中から自然と生み出されてくる微笑だからだ。近年の研究では、赤ちゃんはお腹の中にいるときからほほえんでいることが確認されているそうだ。

なぜ人間の赤ちゃんは笑顔を携えて生まれてくるのか。母親との関係づくりに必要な手段として、赤ちゃんは微笑という顔の形態を選んだのだと研究者はいう。ほほえみ合うことで母親との関係が深まり、心と身体の発達を可能にするのだと。つまり、赤ちゃんは笑顔によって自らの健やかな成長を引き寄せているのだ。

 さて、古事記や日本書紀によれば幼くして海に流されたえびす様。そんな彼が、福の神として祀られるようになったのは、哀れに思った日本人が復活の神話を願ったからともいわれている。遥かな歴史の真実に触れる術はないが、私も、えびす様自らが引き寄せた「福」だったのだと信じたい。と、商売繁盛の福笹を握りしめながら思うのだ。
 
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