2015年2月12日木曜日

「旅の力」

鹿児島で、春を告げるお祭りといえば初午祭。ですね?

このお祭りで鹿児島神宮に奉納される鈴かけ馬の踊りは、
話題の豪華列車ななつ星の乗客へのおもてなしとしても披露されています。

私としては、このお祭りで売られているポンパチをはじめ、
鹿児島神宮に納められている郷土玩具にも魅力を感じています。

そんな話をしたくて、「旅の力」というコラムを書き始めたのですが
書き終えた文章に「初午祭」というワードも「鹿児島神宮」というワードもなかった…。
どうして伊勢神宮になってしまったんでしょう?
これも何かのパワーかしら。

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「旅の力」(南日本新聞「南点」 平成26年2月14日掲載)

 テレビを見ていた息子が「あ、はっぱっけー!」と叫んだ。「違うよ、はっきゃっぺーだよ」と娘が訂正する。でも正解は「はっぴゃっけい」。画面に映っていたのは、800系新幹線つばめだ。どういうわけか、列車大好きになってしまった我が家の子どもたち。そんな彼らのあこがれの列車はもちろん、豪華列車「ななつ星」。

 クルーズトレイン「ななつ星in九州」の名は、九州の七つの県と七つの観光素材(自然、食、温泉、歴史文化、パワースポット、人情、列車)に由来する。「パワースポット」という単語がちょっと浮いているようにも思えたが、世界の古代遺跡や宗教施設が観光地となっている例を見れば納得だ。宇宙旅行さえ現実となりつつある時代にあっても、人は神秘なるものに心を寄せて旅をするものなのか。

 日本最大のパワースポットともいわれる伊勢神宮では、江戸時代に参拝ブームが起こったという。治安が安定し、街道が整備されたことに加え、奉公人が伊勢へ行きたいと言えば主人といえども止めることはできなかったというのが、民衆を旅に駆り立てた理由のようだ。自由が少ない時代である。江戸から歩けば往復およそ1カ月。普段の生活を忘れてリフレッシュするには十分な時間ではないか。「旅の目的は到着することではなく、旅をすることである」とはゲーテの言葉だが、パワーを求めて旅をするという行為そのものにも活力や癒しを与えてくれる力があることは明らかだろう。

 「いびゅたま、ゆふいんのり、ナナハチナナ…。乗りたいなー」。鉄道マニアの息子が、列車図鑑を見ながら呟いている。彼にとっても旅の目的は到着することではなさそうだ。うん、ななつ星は夢だけど、ななつ星の乗客になった気分で七つの観光素材を楽しむ旅ならお母さんも行きたいな。旅先では、お土産用のおもちゃにも注目してみたい。その土地ならではの扮装をしたキャラクターものも面白いが、素朴な姿のまま今に残る郷土玩具もまた、人びとの願いに力を貸してくれる「パワートイ」としての魅力を放っているのだ。


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